太極拳の稽古で、動きを習得するスピードや感じ方に「個人差」があるのはなぜだろう、と考えたことはありませんか?
実は、私たちの脳には情報の受け取り方の「クセ」があります。五感の中でも特にどの感覚を優先して使っているか、これを「優位感覚」と呼びます。今回は、太極拳において特に重要な「視覚」と「触覚」にスポットを当ててみましょう。
1. 「視覚」が優位なタイプ

情報を「映像」として捉えるのが得意な方です。
- 日常生活での傾向: 地図をパッと見て道を覚えるのが得意だったり、人の顔は覚えているけれど名前が出てこなかったりします。整理整頓された部屋を好み、視覚的な情報の乱れがストレスになることもあります。
- 太極拳の稽古では: 先生の動きを鏡のようにコピーするのが非常に早いです。美しい演武(套路)を見て学ぶ際、形を整えるのが得意な反面、地面から伝わる力や筋肉の緩みといった「目に見えない内的感覚」への意識が後回しになりやすい傾向があります。
2. 「触覚(身体感覚)」が優位なタイプ

情報(刺激)を「体感」として捉えるのが得意な方です。
- 日常生活での傾向: 服の素材感や椅子の座り心地にこだわりがあったり、「なんとなく居心地が良い・悪い」という直感を大切にします。話すときも「重みがある」「しっくりくる」といった、感覚的な言葉を多く使うのが特徴です。
- 太極拳の稽古では: 「形」を覚えるのは少し時間がかかるかもしれませんが、重心の移動や相手と触れ合った時の反発力など、内部のエネルギーを感じ取るセンスに長けています。推手(すいしゅ)のように、相手の力を聞き取る(聴勁)際に強みを発揮します。
自分の「利き感覚」を活かして上達する
太極拳は、最終的には「視覚的な正確さ」と「触覚的な内功」の両方を統合していく武術です。
- 視覚優位の方は… あえて目を閉じて動いてみたり、足裏の接地感に全神経を集中させる時間を設けてみる。
- 触覚優位の方は… 自分の演武を動画で撮影し、客観的な「絵」としてチェックしてみる。
自分がどちらのタイプかを知るだけで、稽古の視点はガラリと変わります。普段の生活でも、「自分は今、目で判断しているかな? 肌で感じているかな?」と観察してみると、意外な発見があるかもしれません。